コラム
貿易管理業務は複雑な工程と多くの書類、たくさんのステークホルダーが関与する業務です。物流においても、いくつもの工程が存在します。各プロセスで異なる業者を起用することには、一見するとコスト削減のメリットがあるように見えますが、実際には連携不足によるリスクと予期せぬキャンセル料発生の温床となるケースが少なくありません。すべての工程を一貫で手配する丸山運送の経験をもとに、本コラムでは、一連の工程を細切れにしてそれぞれで違う業者を選択する際の注意点を解説していきます。
Contents
まずはおさらい、貿易の流れを理解しよう
リスクの説明をする前に貿易の流れについて理解しましょう。
貨物が海を渡り日本(もしくは海外現地)に到着するまでに、フォワーダー、通関業者、ドレージ業者、倉庫業者、運送会社といった事業者が登場します。各事業者が互いに連携することで、貨物をお客様のもとへお届けします。
それぞれの事業者の役割は以下の通りです。
なぜ業者の分割がリスクを生むのか?
貿易管理の業務上、複数の工程においてそれぞれ最安の業者を起用したい気持ちは十分理解できます。
しかし、管理の複雑さ、イレギュラー発生時の対応など、実際にはコスト削減にならない、或いはトラブルが発生してしまう事例は少なくありません。なぜ、業者の分割がリスクを生むのでしょうか。それは、以下の点が考えられます。
1.責任の所在の不明確化
各業者は自社の守備範囲を全うしようとしますが、他社起因のイレギュラーに対してカバーする責任を持ちません。
結果、発生した書類作成や待機、キャンセルなどは全て追加料金となってしまうケースが殆どです。
2.情報伝達の齟齬・遅延
複数の業者を介することで、情報共有にタイムラグが生じたり、誤った情報が伝達されたりするリスクが高まります。
例えば、船のスケジュール変更が通関業者やドレージ業者に正確・迅速に伝わらず、キャンセル料の発生や再予約が取れないなどという事態も発生します。
3.複数業者との連絡や調整
船が遅れた、税関検査になった、商品が破損した、トラックが渋滞で遅れそう、など、イレギュラー発生時に複数の業者と連絡や調整が必要になります。
正直、1日これで終わってしまうかも?
キャンセル料発生の具体的な3つのシナリオ
業者間の連携不足により、実際にキャンセル料や追加費用が発生する複合的なシナリオを紹介します。
シナリオ1:船の遅延が波及
フォワーダーAで予約していた船便が、港の混雑により出港が数日遅延。
その情報がドレージを手配した業者Cにタイムリーに伝わらなかった、あるいは伝わっても既に手配済みの車両をキャンセルできなかった。
結果: ドレージ業者Cから車両のキャンセル料が請求される。また、通関後の倉庫Dへの搬入日も変更となり、準備していたデバンニング作業員のキャンセル料が発生する可能性。
シナリオ2:通関遅延が波及
通関業者Bが、荷主提供の書類不備により通関手続きに手間取り、想定よりも数日遅延。
その結果、貨物が予定のドレージ車両に間に合わず、ドレージ業者Cは手配済みの車両をキャンセルせざるを得なくなる。
結果: ドレージ業者Cから車両のキャンセル料が請求される。さらに、港でのコンテナ超過保管料(Demurrage)や、再手配費用、急なスケジュール変更による倉庫Dでの追加費用などが発生する可能性。
シナリオ3:税関検査が発生
輸入した貨物が税関検査の対象となり、開扉検査に該当してしまった。保税倉庫での全量検査などは日数がかかり、全ての工程が後ろ倒しになり、各業者からキャンセル料の請求や次の手配に関する問い合わせが殺到。
結果: 通関業者Bだけでなく倉庫業者Dからも検査の立ち合い料の請求、運送会社Eからは予定していた配送のキャンセル料が請求され、直近で次のトラックの手配がつかないと言われた。
経営・管理職が知っておくべき貿易管理対策
一元管理の検討
信頼できるフォワーダー(複合一貫輸送業者)と契約し、船の手配から通関、ドレージ、倉庫手配までを一元的に任せることで、情報連携のスムーズ化、責任の明確化、そして万が一の際の交渉力向上に繋がります。初期コストは高めに見えても、トータルでのリスクと追加コストを抑えられる可能性が高いです。
契約内容の確認と明確化
各業者との契約段階で、キャンセルポリシー、変更料、待機料、責任範囲(免責事項)などを詳細に確認し、書面で明確にしておく。
特に、Incoterms(インコタームズ)の適切な理解と適用が不可欠です。
リスクアセスメントと予備計画
発生しうるリスク(遅延、事故、コスト増)を事前に評価し、代替ルート、予備の業者、緊急時の連絡体制などの予備計画を準備しておくと安心です。
特に、船の遅延は珍しいことではなく、途中経過の報告や代替え案の提案をしてくれるパートナー選びが重要です。
情報共有体制の確立、デジタルツールの活用
各プロセスに関わる業者や社内関係者(営業、生産、SCMなど)が必要な情報をタイムリーに共有できる仕組みを構築することで、複雑な貿易管理が大きく効率化します。
デジタルツールで見えにくい貿易管理を見える化することも有効な対策となっています。
㈱日新と㈱丸山運送が提供するデジタルフォワーディングツール【ForwardONE】も業務効率化に大きく寄与するプラットフォームです。
ForwardONEの実務画面です
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コンプライアンスの徹底
各国の輸出入規制、税関規則、安全保障貿易管理(輸出管理)などの法令遵守を徹底し、違反による罰金や業務停止などのリスクを回避する。
定期的な社内研修も効果的です。
まとめ
今回は、複雑な貿易管理を細切れにして、複数の業者を起用するに実際に起こり得るイレギュラーやトラブルについて解説してきました。
貿易管理業務は信頼できるパートナー選びが重要です。
守備範囲の広さや提案力、過去の実績などを確認し、最適なパートナー選びを進めましょう。
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