コラム
輸入業務では、商品を海外から発送しただけでは国内で販売・使用できません。
日本の税関に輸入申告を行い、必要な審査や検査を経て、輸入許可を受ける必要があります。しかし、書類の不備や申告内容の誤りによって、通関手続きが止まってしまうケースは少なくありません。
本記事では、これから輸入を始める方や、商社・メーカーで貿易実務を担当する方に向けて、輸入通関でよくあるNG事例と、その対策を分かりやすく解説します。
Contents
よくあるNG事例1:インボイスの商品名が曖昧
Item:Parts Sample Goods Accessory Gift
このように、商品名が抽象的だと、税関が「何を輸入するのか」を正確に判断できません。
輸入申告では、商品の種類や用途、材質、状態などをもとに、適切なHSコードや関税率を確認します。
商品名が曖昧だと、次の確認が必要になります。
- 具体的に何の商品なのか、何に使用するものなのか
- 材質は何か
- 完成品か部品か
- 販売用かサンプルか
【対策】
インボイスには、第三者が見ても商品を特定できる名称を記載します。
例:
– Parts → Stainless steel automotive brake parts
– Sample → Plastic household storage container sample
– Accessory → Leather smartphone case
商品名だけで判断しにくい場合は、用途・材質・型番なども補足しましょう。
よくあるNG事例2:インボイスの価格が不自然、または記載されていない
- 価格が「0」と記載されている
- 「No commercial value」とだけ書かれている
- 市場価格と比べて極端に安い
- 送料や保険料の扱いが不明確
- 売買価格と請求書の金額が一致しない
無償サンプルや展示品であっても、価格「0」での申告はできません。
国境を越える貨物に対しては、有償・無償に関わらず、税関が関税や消費税(輸入税)を算出する必要があります。
そのため、税関に対して「この商品には客観的にこれだけの価値がある」という申告価格を示す義務があります。
【対策】
無償貨物の場合も、次のような情報を準備しておきましょう。
- 無償である理由
- 通常の販売価格
- 取引条件
- 送料・保険料
- 売買契約書や注文書
- サンプルであることを示す資料
価格を低く申告すれば関税や消費税を抑えられる、という考えは危険です。
事実と異なる申告は、追徴課税や処分につながる可能性があります。
よくあるNG事例3:原産国の表示を誤っている
原産国とは、単に「どの国から発送されたか」ではなく、原則として貨物が生産・製造された国を指します。
【 NG例】
- 中国製の商品を、香港から発送したため香港原産と記載する
- 複数国で加工した商品の原産国を確認していない
- 部品の原産国と完成品の原産国を混同する
【対策】
仕入先に、次の内容を確認します。
- 製造国
- 主な加工を行った国
- 原産地証明書の有無
- 複数国で加工された場合の工程
- EPA・FTAの適用可否
原産国は、関税率だけでなく、貿易管理や表示、経済連携協定の適用にも関係します。
よくあるNG事例4:輸入規制の確認ができていない
商品によっては、税関への申告だけでなく、他法令に基づく許可・承認・届出などが必要です。
| 商品 | 主な関係法令 |
|---|---|
| 食品・飲料 | 食品衛生法、食品表示法 |
| 医薬品・医療機器 | 医薬品医療機器等方(薬機法) |
| 化粧品 | 医薬品医療機器等方(薬機法) |
| 健康食品 | 食品衛生法、食品表示法、健康増進法、医薬品医療機器等方(薬機法) |
| 植物・種子 | 植物防疫法 |
| 肉製品 | 家畜伝染病予防法、食品衛生法 |
| 革製品 | ワシントン条約(CITES)、関税法、種の保存法※動物種による |
| 電気用品 | 電気用品安全法(PSE法) |
| 無線機器 | 電波法 |
| 玩具 | 食品衛生法※乳幼児向け玩具など、対象商品による |
| 化学品 | 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法※物質による |
| 酒類 | 酒税法、食品衛生法、食品表示法 |
※上記は一例です。商品によってはその他の法令の対象となる場合があります。
たとえば、食品を販売目的で輸入する場合には、食品衛生法に基づく手続きが必要になることがあります。植物や肉製品などは、検疫に関する確認も必要です。また、食品に接する商品は通常食品としての申請が必要になります。食器や電気機器、口に入る可能性がある知育玩具なども食品届が必要になるため注意が必要です。
【対策】
輸入を始める前に、次の点を確認します。
- 商品の正確な分類
- 輸入目的(販売用、業務用、個人使用など)
- 必要な許可・届出、関係省庁への確認
- 国内販売の際に必要なラベルや表示要件
- 輸入者に求められる責任
商品によっては、税関以外の行政機関への手続きが必要です。
【番外編】輸入でよくあるトラブル:輸入前に納期や費用を確認していない
輸入業務において、想定外の費用や日数を見込んでいないことも大きなリスクとなります。
【発生しやすい費用】
- 関税、輸入消費税(税額、納付方法など)
- 通関料(危険品等は通常よりも高額になる場合あり)
- 貨物の保管料(デマレージ)、コンテナの返却延滞料(ディテンション)
- 検査費用(税関検査、食品、植防、動検等の各検査費用)
- 書類訂正費用(不備があった際の訂正料)
- コンテナ関連費用(ドレージ料、待機料、3軸使用料など)
- 倉庫費用(デバンニング料、保管料、積替え料、廃材処理費など)
- 国内配送費(トラック手配の他に荷役料、待機料など)
また、輸入規制の確認や検査が必要になると、通常より通関に時間がかかります。
特殊コンテナなどはフリータイムが短く、気付くとデマレージが発生してしまっているケースがあるため注意が必要です。
【対策】
納期を厳密に管理する場合は、通関にかかる時間を余裕をもって設定することが重要です。
輸入通関は、貨物が到着してから対応するのではなく、輸入を決めた段階で準備を始めることが大切です。
「この商品は輸入できるのか」「どのような書類が必要か」「関税や通関費用はいくらか」など、不明点がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
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